pluie/プリュイ

3/9
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
      友人になった人は何人かいたし、好きだと思った女性も居たさ。 けれど俺が告白する前に、彼女たちは彼氏を作ったと俺に笑顔で報告をしてきて。 俺は笑って「そうか、良かったな。」なんて、心にもない言葉で、彼女たちを見送っちゃって。 胸が苦しくて眠れない夜なんて、嫌になるくらい過ごしたけれど。 その後、彼女たちの話を聞く事もなく、俺は一人で過ごしている。 つまりは俺には、良いご縁なんて、結ばれちゃいない訳だ。 眼鏡越しに見える街中は、強くなって来た雨で少し煙って見えて。 情けない顔をしているだろう俺の表情を隠すには、もってこいだな。 寒くはないのに、足元から震えが上がって来る。 俺はこのままずっと、恋もせず、誰も愛さず、一人で朽ちてゆくのだろうか。 手の平で腕を掴んだけれど、怯えと不快感は、俺から立ち去ろうとはしない。 この世には、沢山の女性がいるのに、俺の傍には誰一人として、来ない。 親友も幼馴染も結婚をして、奥さんや娘と笑いあっているのに。 俺には握る手もない。 俺の名前を呼ぶ声もない。 ああ。 こんな事を考えてめげているなんて、情けない。 きっとこんなに憂鬱なのは、この雨のせいだ。 くそっ。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!