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精霊によって回る世界になったことで、世界は大きく五つに分かれた。
アーツ部品大量生産の『大亜連合』、精霊素材大量産出の『アラブ連盟』、最新アーツ開発の『アメリカ共連』、先進魔法教育の『ヨーロッパ帝連』、そして情報がほとんど出回らない『大和』。
全く情報がわからない『大和』は除くとして、それ以外の連合国が今の社会を回していると言っても過言ではない。
『ペルーシュ国立魔法学園』
俺達が在籍している学校は『ヨーロッパ帝連』の西エリアの中の南側に存在していた。
「へぇ~、昨日そんなことがあったんだ~」
「ああ……」
目の雨で感心しているオレンジ色の髪をツーサイドアップにした少女へ、俺はてきとうな返事を返して机に突っ伏す。
昨日から同じ説明をしていた為、さすがに疲れてきたのだ。
これ以上突き詰められるのは嫌だと突っ伏したまま俺は懇願する。
「もういいだろヴィヴィ、それ以上お前が面白がりそうな話はない」
「そうかな~案外面白そうな話になったりして」
「んなテンプレあるかよ、普通……」
「だって…ねぇ……」
それでも食い下がる彼女―ヴィヴィことヴィオラ・オーキッドに俺は半ば自棄になりながらグッタリとする。
確実に面白がっている彼女にこれ以上何か言っても逆効果だということを、中学からの知り合いである俺はわかっていた。
「そんな面白そうなことなら……」
「確かにヴィオラちゃんが面白がりそうな内容だけど、カイトの言うとおりそうそうないと思うよ?」
更に余計な何かを言いかけたヴィオラを諌めたのは、俺の横でしょうがないなと言うように苦笑している金髪ミドルヘアの少女だった。
だが、俺は彼女をジト目で睨みながらため息混じりに告げる。
「リラ、お前も人のことは言えないぞ。昨日面白がって聞いてきただろ」
「代わりに連絡してあげたんだから、そのくらい説明するのは礼儀でしょ?」
「ぐっ……」
俺と彼女―リラ・ハルルクは同じ孤児院出身で、妹のような存在である彼女とは小さい頃からの付き合いである。下手したら俺以上に俺のことについて知っている。
だから、そんな彼女に腰に手を当てて若干呆れ口調でそう言われてしまえば、頼んだ手前これ以上変にいじられないように黙るしかないわけで……。
もうどうにでもなれというように思考を放棄した俺は、昨日出会った少女の名前を思い出していた。
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