第一章『大和からの来訪者』

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 サクラ・ベルフェルト……か。どこかで聞いたことのある名前なんだが、なんだったかな。  何度か聞いたことのある名前だとは思うんだが。  少し気になった俺だが、ここで彼女達にこの名前について聞くのは気が引けた。  さっき散々いじられたのだ。さらにいじられるのが明白な質問を控えるのは当然だろう。  そこへ俺に声をかけてくる人物がいた。 「ういっす!なんか疲れてんなカイト」 「聞かないでくれヴァン、お前に説明すると三度目になるから…」  俺はやってきた長い茶髪を後ろで結んだ少年に、姿勢を変えることなく即答で答える。  もう同じ説明は勘弁だった。  彼はヴァンダー・F(ファルケ)・クレセンドラ。  クレセンドラ財閥のお坊ちゃんだが、本人曰く「それは俺の功績じゃないから敬われる謂れはない」とのことで、ヴァンという愛称で普通の友達として皆は接している。  ヴァン自身がフランクな態度を崩さずに、常に周りのことを考えて動いている為、周りも接しやすい。そんなタイプの人間だ。  俺はそんなヴァンに少なからず感謝していた。  孤児院出身ということで色々言われる俺やリラが、現在普通に楽しく学園生活を送れているのは彼の人徳のおかげだったりする。 「なるほどな、んじゃ聞かねぇわ」 (よかった……) 「それよりさ、なんか昨日女子寮の方が騒がしかったけど、何かあったのか?」  どうやら俺に関する話題より気になる話題があるらしく、さりげなくそちらへ持っていく。  まあ、今回はそっちに話題が逸れてくれるのはありがたい。  俺がホッとしている横で、ヴァンの問いかけにリラとヴィオラは首を横に振る。 「ごめん、知らないや」 「うん、騒がしいのは知ってたけど、詳しいことは聞いてないの」 「そっか」 「お前ら席に着け~」  話が切れたところへブロンド色の髪をしてメガネを掛けた男性教師が入ってきた。  カブラ・ネルヴ、一年から俺達の担任で、噂ではかなりの魔法戦闘の実力者らしい。  その噂があるからなのか、皆が真面目なのか、普段から気怠そうにしているにも関わらず、このクラスの雰囲気は比較的良好である。 「んじゃホームルーム始めるが、その前に転校生を紹介する。喜べ男子ども、女子だ」  そんなテンプレ発言に、興味なさげな反応をする俺と、普段通りの態度を崩さないヴァンのような一部以外の男子が歓声を上げる。
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