プロローグ

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 出来上がったばかりの足場に着地した俺は足を踏みしめて、今度は先程の通り目掛けて再び跳躍した。  その先には先程と同じように作った氷の足場があり、俺はそこに着地して少女が向かったであろう方向の先に目を凝らす。  さっきの女の子はすぐに見つかった。このあたりでは珍しい服装をしている上に通行人を押しのけようとするところが相当目立っている。  ということはこの先にいるはず。  彼女の行く先に視線を移して目を凝らす。人通りが多いため、なかなか見つからないが、相手は黒い服にフードを被るという少し目立った着こなし方をしている。  簡単に見失うことはないと思い、さらに目を凝らして見ると。 「いた!」  脇道に逃げようとする黒フードの姿がギリギリではあるが、発見することができた。  すぐさま俺は足場からジャンプして商店街の天蓋の上に躍り出る。  奴の後を追いかけるより、屋上と天蓋を利用してショートカットした方が早い。  先程黒フードが入っていった路地から通行可能なルートを脳内で検索しつつ、俺は屋根伝いに駆ける。  普通ならば落ちているであろうが、身体能力が強化されている今の俺なら、脇道程度の路地なら易々と飛び越えることができる。  2、3本程路地を過ぎたあたりで奴の入っていった路地の入口に差し掛かった。  その先へ視線を向けるが、どこにも見当たらない。  だが、先程見かけた時から時間は数秒ほどしか経っていないことを考えると、そう遠くへはいけないはずだ。  右か左の脇道に逸れたのだろうと思い、すぐ近くにある十字路で周囲を確認してみると、やはりというべきか、すぐ先に黒フードの姿を発見することができた。  この足ならばすぐにでも追いつくことが可能だが、相手に魔法を使われて反撃されるのも面倒だ。 「凍らせろ!」  片手を地面につけながら命じると、黒フード目掛けて地面が凍りついていく。  先程の魔法からわかっているとは思うが、俺が使っている魔法は氷の魔法である。  目に見える水を凍らせて氷にすることもできれば、空気中の目に見えない水分を凍らせて氷の足場を作ることも可能なのだ。  そして今回は、地面に付いた水分を伝って冷気を相手の足元までに伸ばし、対象の足の周りの水分を凍らせて動きを封じるという使用方法をとった。 「くっ!」
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