プロローグ

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 魔法は基本的にアーツを中心に発動する。例えば俺の氷の場合、手をかざして凍らせる方向などを定めて冷気を飛ばさないとダメだったり、直接触れなければ冷気をぶつけて水分を凍らせることはできない。  もし、彼のアーツがグリーグなら魔法の起点がそことなり、炎を現すことなく熱のみで氷を溶かすことは簡単だ。 「ハァ!」 ゴゥ!  などと考えている間にも男性は俺達目掛けて炎を飛ばしてくる。  俺はそれを余裕のある動きで彼女を庇いながら回避して足に力を込める。 「これが武器だったらもっとわかりやすいんだろうけどな!」  男性が攻撃してきたことで、反撃せざるを得ないと判断した俺は、半ば仕方ないとぼやきながら男性に向かって一気に距離を縮めた。  スピードは魔法戦闘ではそこそこ程度で、更に反撃である上に不意を打ったわけではない。  いわゆる小手調べレベルのスピードだ。  だが、男性はこの程度のスピードに若干怯んだ様子を見せてガードする体勢をとった。  その動きに一瞬で俺は相手の実力を読むことができた。 (こいつ、魔法戦に慣れてないな)  先程説明したとおり、魔法戦闘でこの程度のスピードは当たり前で驚くところではない。  にもかかわらず驚いたということは、魔法の使用に関して慣れてはいるが、まともに魔法を用いての対人戦闘を行ったことがなかったのだろう。  そう判断すると、二歩目でさらにスピードを上げてガードの上から攻撃をぶつけた。  慣れていないということは、それなりにガードも甘いということだ。  この程度のガードならその上から一発ブチ込むだけでも十分崩すことができる。  その目論見通り、男性のガードは容易に崩れ、体がふらつく。  俺はそのまま流れるように男性の手首を掴んで捻ると、背中に周り全体重をかけて押し倒した。 「おとなしくしてろ!」 「いでででで!」  それでも魔法を使って抵抗しようとする男性を、腕を捻り上げて止める。  抑えるのも面倒だが、これ以上暴れられるのも面倒な為、しばらくこうしておこうと考えながら被害者の少女へ視線を向けた。 「…………」 「大丈夫だ、だからそう身構えるな」  俺がそう告げると、彼女は言葉がわからないなりにも理解したようで、抜こうとしていた短剣をカバンの中にしまった。  そして男性に近づいて装備していたグリーグを外していく。
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