水中少女

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椅子から立ち上がり、鞄から携帯電話を取り出した。画面には後輩の名前が映っていた。なにか言い忘れたのだろうか。 「はい、もしもし? どうかした?」 「どうかしたじゃないですよ先輩!」 耳元で大声を出され、耳鳴りと若干の頭痛を携え聞き返す。 「どうしたの、大声なんか出してさ」 「先輩、本当ですか! 私親伝から耳にしたんですけど今回の大会参加しないってどう言う事です?」 「……。そのままの意味かな」 「先輩、水泳着に着替えて海岸に来てくださいね! 以上です! 絶対に来てくださいね!」 一方的に通話を終了させられ、一時呆けた。携帯電話を閉じる。水着に着替えるってまたなんで。面倒だ。濡れている水着より、予備を使おう。水着をクローゼットを漁り、取り出した。服を脱ぎつつ、水着を慣れた手付きで着た。ゴーグルを頭に通して首に回した。水着姿だと肌寒いが妥協しよう。フード付きの外套を競泳水着の上から羽織る。外套に携帯電話を押し込んだ。 頭が痛いが、言わなかった私に非がある。騙した私が悪い。まさかこんなに早く露呈するとは思わなかった。どう言い訳したものか考えあぐねながら階段を下る。
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