ⅡⅩⅢ

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坂道を上がりながら 兼三は美加の肩を そっと抱いた。 「言わなくて ごめんな……」 美加は俯いて 小さく首をふる。 「あの子は…… 愛ちゃんは 私の娘なんだよね。 わかってるよ。 でも 意地張ってた訳じゃないんだよ。 ただ……」 兼三は黙って頷く。 「本当は お墓参りにも 一度は行かなきゃいけないって…… わかってはいたの。 でも…… あんまり 色々あったから」 「パパ~~! ママ~~!」 百合が 崖の上から二人を見つけて 手を振っている。 百合に手を振りかえして 美加が 兼三に笑いかけた。 「百合 もう、あそこにいる。 あの時も そうだったよね」 「あれから まだ1ヶ月だ。 しかし 本当に色々あったよな」 美加が こくんと頷いた。 「お墓参り行ったら きっと 愛ちゃん喜ぶぞ! いや…… 嫌がるかな? 怖い説教ママがきたってな!」 「もう!兼三!」 美加が 口をふくらませて 兼三を睨みつけた。 「沢山食べ物 持って行かなきゃ。 愛ちゃんが 二度とお腹が空かないように」 せっかく登った山を駆け下り 兼三と美加を迎えにくる百合を見て 美加は走り出した。 百合に手を振り 山道を駆け上がる美加を 兼三は笑いながら見つめた。
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