第1章

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らずに内ポケットや上着のポケットに入れられていた弾倉を四本取り出しそれも鞄に入れ た。 そして隆はその場から逃げるように走り出した。 何でこんなことをしてしまったのだろう自分でもわけがわからない、隆は必死に走りなが らそう考えていた、今から救急車を呼んでも男は助からないだろうし何で倒れたときに呼 ばなかったと聞かれたら困る。 警察だってそうだ、あの男が何かの事件にかかわっているのは駅前のビルから降りてくる のを見ていて知っているのだ。 それに警察に通報したときに今自分が盗んでしまった拳銃のことを考えると消防にも警察 にも通報することができずただその場から走って逃げた。 体に感じる痛みを忘れて自分の家まで走ってきてしまった、額には汗で髪の毛が張り付き 蹴られた所が痛い。 息が整わない内にポケットから家の鍵を取り出してドアノブに差し込んで鍵を開け中に入 った。 母親はパートに出かけているので隆は靴を脱いでそのまま階段を上がり自分の部屋に入り 鍵を閉めた。 部屋に入ると隆は鞄を下ろして中から男から奪った拳銃と弾倉を取り出して手に持ってみ た、その拳銃を手に持つとずっしりとした重みが感じられて手が震えてきた。 暴発したら怖いのですぐに拳銃を机の上に置き次に弾倉を取り出した。 取り出した弾倉には先が銀色と金色の光を放つ弾が収まっていて銀色になっている弾頭の 先は少し凹んでいるような状態になっていた。 どうやらエアガンなどのおもちゃではなく本物だということがわかり背筋に悪寒が走り自 分のしてしまったことに恐怖を感じた。 隆はテーブルの上に置いた拳銃と弾倉を机の鍵のかかる引き出しに入れて鍵を掛け、鍵は 隣の鍵が無い引き出しに入れた。 隆はベットに倒れるように横になると自分が素手であの男の死体を触っていたことを思い 出した、あの男は死んでいたのだから警察が来て現場検証をするのだろうか?もし現場検 証をするのなら、男の死体を素手で触った自分の指紋も取られてしまい自分も警察に捕ま るのではないかと思うと心配になり心が締め付けられるような感覚になり、いても立って もいられずに部屋の中を歩き回った。 両親が帰ってきたが隆は部屋にこもって震えていた、人を見殺しにして拳銃を奪ってきた 罪悪感が襲ってきていて帰ってきて歩き回った後はベットに寝そべり震えていた。 「降りてきなさい、ご飯できたわよ」
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