第1章

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電車の中には同じ高校や近くの学校の学生や大学生、サラリーマンが乗っていてごった返 していた。 電車のつり革に捕まり外を見ていた、このままどこかに行ってしまいたいと思っていると 隣のクラスの男がこちらを見ていて視線が合うとこちらに向かって笑った、もうこれで俺 が高校に向かって電車に乗っていたのを知られてしまった、今から休むとサボりになって しまうそれを奴らに知られたら俺はさらに酷い目に遭わされてしまう・・・・。 駅から降りて高校に向かって住宅街の中を歩いていくと周りにはいつの間にか同じ制服を した学生が同じ方向に歩いていた。 すぐに高校の校舎が見えて来て校門から敷地に学生が入っていくのが見えた、隆の足取り が重くなり何人もの生徒に抜かれて校門を通った。 玄関に行き下駄箱の中に外履きを入れ内履きに履き替えて自分の教室に向かって歩き出し た。 「緋采君、おはよう」 声がした方に振り返るとそこには同級生の水井眞由美であった。 「おはよう」 そう返事をすると隆を追い越して教室に向かって友達と話しながら歩いて行った、隆はそ の後を歩き水井のポニーテールが揺れているのを見ていた、彼女くらいしか私に学校で話 しかけてくれる人はいない。 一年棟の階段を登っていき三階の自分の教室のドアを開けて中に入ると、一瞬静まり返っ たが何もなかったように騒がしくなった、隆は自分の机に向かって歩いていくと机の上に は花瓶が置かれていた。 隆はそのまま走って逃げたくなる衝動を何とか堪えて隆は花瓶を持って後ろの棚に置き自 分の机の椅子に座って誰とも視線を合わせないように机の木目を黙って見ていた。 しばらくすると担任の速水がやってきてホームルームを始めた、隆には速水が言っている ことはすべて聞いていなかった。 この速水にも周りからいじめられていると相談したのだが、「それは気のせいだ」、「お 前がいじめられていると思っているだけで奴らはわるくない」、「お前の受け止め方が悪 いんだ」などといわれた。 だからもう隆はあの男を信用はしていないので話を聞く必要がない、隆は少しでも嫌なこ とを忘れるために授業に集中し、しっかり聞いて勉強した。 昼休みになり隆は教科書を机の中にしまい、教室から逃げ出そうと立ち上がり廊下に移動 しようとすると廊下からこちらを見ている茶髪の男がいた。 「おい、タカ、こっち来い」
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