第1章

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そういって睨んでいるのは森智治という狐のような顔をした男であった、くそ、捕まって しまった、もうにげられない、隆は体全体に嫌な感覚が走り手に汗を掻いてくるのがわか った、隆が立ち止まったままでいると森智治が言った。 「突っ立ってないでさっさとこっちに来いよ」 そういって笑いながら近寄ってきて隆の肩に腕を回して逃げられないようにした、森智治 は香水をつけているのか異様な甘い香りがしてきた。 隆はそのまま強引に廊下に連れ出された、階段を下りて体育館の倉庫の中に連れて行かれ た。 倉庫の扉を森が開けると中にはいつもの俺をいじめる奴等がそろっていた。 「遅いじゃないか」 「こいつがちゃんと歩かないんですよ」 中から聞こえてくる声に隣の森が返事して行った、そして森は隆を突き飛ばして倉庫の中 に押し入れた。 隆は転びそうになりながらも倉庫の中に入った、倉庫の中は湿った臭いがしていつもの奴 等がこちらを見て笑っているのが見え、足が震えて背筋が凍るのを感じた。 今からでも遅くはない、走って逃げ出そうと振り返ったが森が笑いながら逃げ道を塞がれ てしまった。 「どこに行こうとしてるんだよ」 倉庫の中の跳び箱に腰掛けていた中村昇がニキビが浮いた顔でこちらを睨みでかい体を揺 らしながら近づいてきて隆の胸倉を掴んだ。 胸倉をつかまれた隆は中村を見てから視線を外した。 「お前のその目が俺は気に入らないんだよ、生意気な」 掴んでいる胸倉を掴みあげられ隆は倉庫の奥のほうに突き飛ばされ隆は地面に腰を打ち付 けた。 地面に頭を打ち付けないように頭を下げたのだが、その代わりに腰を地面に打ちつけてし まい体に痛みが走り、倉庫にたまっていたほこりが手につきザラザラした。 すると隆を囲むように倉庫の中にいた三人が立ち隆を見下ろした。 「むかつくな、お前」 「眼が気に入らないな」 「俺は存在がむかつくんだよ」 口々にいい、そのうちの一人の佐藤卓也が腹の上に足を置いて段々と体重をかけてきた。 「うっ」 重さが増すにつれて体の中の空気が押し出されて思わず呻いてしまった。 「とりあえず焼きそばパンを買って来いや」 佐藤がそういってわき腹を蹴った、すると他の奴らも言った。 「俺も焼きそばパン」 「俺にはコロッケパン」 「俺にはメロンパンだ」 そういって隆を強引に立たせて背中を蹴って倉庫の外に追い出され転びそうになりながら も外に出た。
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