第1章

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こみ、森が金属バットを机に叩きつけ、机の上が割れた。 「そいつを逃がすな」 椅子を上田に向けて投げたが簡単に避けられ、慌てて近くの椅子を持ち上げた。 「どうして嘘だとわかったんだ?」 痛む足をかばうようにして後ろに下がりながら言うと森が驚いて目を見開いていった。 「お前本当に嘘をついてたのか?」 隆は驚いたが、中村と樋口たちも驚いて森を見ていた。 「さっきのは嘘だったのか?」 「あぁ、カマをかけて見ただけだ、それが本当だとわな」 森はそう言ってこちらを見た。 「本当のことを言え、緋采!」 森が怒鳴ると中村も樋口もそれに続いた。 「さっさと言え!」 「クソ野郎だな!」 そういって周りを取り囲むように迫って来る、隆は椅子をそいつらに向けて飛び掛ってこ ないように椅子で威嚇しながら後ろに下がった。 「後ろはもう壁だぞ、逃げられないぞ、どうするんだ!」 森が怒鳴ると左端にいた上田が言った。 「そのまま飛び降りちまえよ」 こちらを睨みながらはき捨てるように言った。 「飛び降りろ」 「飛び降りろ」 黙って教室の端に逃げていた同級生が言い出し、その声はだんだんと教室中に広がってい った、男も女も隆に向けて飛び降りろと言っている。 悔しくて涙が出てくるがこの人数ではどうにもできない。 足の指が潰れて出血していて力いっぱい走ることができないので逃げようとしても捕まっ てしまうだろう。 逃げることはできない、このままだとボコボコにされてしまう。 後ずさりをしながら後ろを見た、開いている窓の外に大勢の教師と生徒が集まって何かを しているのが見えた。 何かが動いた気配を感じ振り返ろうとすると目の焦点が合わないうちに突き飛ばされて窓 に背中を打ちつけた。 痛いがすぐに立ち上がろうとしたが中村が胸倉を掴みあげて窓に押し当てられた。 「このまま落とすぞ」 中村が大声で窓から外に出そうとし、隆は必死に中村の手を掴み落とされないように抵抗 した。 「やめるんだ、中村!」 「やめろ!」 森と樋口が叫ぶが中村には聞えていない、周りの落とせという声が大きくなっていく。 くそ、俺はここで死ぬのか?嫌だ、死にたくない。 隆は中村の手首を掴んでいる手を離し中村の耳を掴み下に一気に引っ張った。 「うぁぁぁ」 悲鳴が聞え中村の左耳が千切れ血があふれ出している、中村はまだ手を離さないそれどこ ろかさらに力を込めて隆を突き落とそうとした。
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