第1章

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隆は千切った耳を中村の顔に投げつけた、一瞬目を瞑った隙に隆は右足のつま先を中村の わき腹に思いっきり蹴り込んだ。 「いっ」 中村はそう言って胸倉を掴んでいる手の力を弱めた、隆は窓枠を開いている手でしっかり 持ち出血して痛む左足で壁を蹴って中村にうまく体当たりし、中村は机に背中を打ちつけ ながら倒れ、出血している左耳のあったところを押さえていた。 「よくもやったな」 樋口がそう言って近寄ってくるのが見えた、隆は痛む体で逃げようとすると自分の鞄が目 に入った。 あれしかない。 隆は自分の鞄を掴んだ、だが背中も掴まれた。 「もう終わりだ」 樋口の声がしてわき腹をけられた、転がるようにして仰向けになったが鞄からは手を離さ なかった。 「もう許さん」 中村が馬乗りになって隆の顔を一発殴った。 鞄の中に手を突っ込んでいた隆は頬を殴られ一瞬目の焦点が合わなくなり、さらに続けて 殴ってきたが隆は目を瞑り必死にバックの中の拳銃を探った。 二発目を食らったときに指に拳銃の感触があった、必死にそれを掴みそれが撃鉄であるこ とがわかり指で感触を確かめながらグリップを掴み安全装置を外そうとした。 すると三発目が飛んできて頬に鈍い痛みを感じ口の中が切れて血の味が広がり、髪の毛を 掴まれた、隆は顔の痛みを我慢しながらうっすらと目を開けた。 「お前はもう終わりだ」 そういうと樋口の後ろで目を血走らせて左耳をかばいながら金属バットを持ち上げた中村 がいた。 殴られた衝撃でも拳銃を離さなかった隆は引き金と安全装置の場所を指の感覚だけで探り 当てていて、思わず笑ってしまった。 「何がおかしい」 「教えてやる、高橋を殺したのは俺だ」 隆が言うと樋口が目を見開いて言った。 「お前が高橋を殺したのか?」 樋口の声は教室中に響き渡り飛び降りろと言っていた同級生たちが黙って静まり返ったが、 森の声が聞こえた。 「殺れ、中村」 隆は安全装置を外して自分を奮い立たせるために叫んだ。 「お前らこそ死ね!ゴミ野郎」 喉が裂けそうになるくらい叫びながら隆は引金を引いた。 突然森は耳に刺さるような破裂音が響き目を閉じたが、すぐに目を開けた誰もが驚いて教 室の中が静まり返った。 樋口も驚いているのか背中が固まって見えた。 「おい」 森がそういった時に隆にバットを振り上げていた中村が仰向けに椅子を弾き飛ばしながら
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