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それから数日後のことだった。
「いない……」
その日の朝、女郎蜘蛛はいなくなっていた。だが、逃げれる訳がないのだ。餌を与える時以外は蓋を開けてないのだから。
今や私にとってあの蜘蛛は命よりも大切なものだ。だから逃がすはずがない。
なのに逃げた。散々探し回ったのに見つからない。
諦めて次の虫を蟲毒にするしかないのだろうか。次の虫が成功するかは分からない。成功しなかったら?
成功するまで喰い合わせるしかないだろう。
嗚呼、厭になる。やっと安らぎが出来たと言うのに。
「やはり、いないか……」
あれからまた数時間探したが、女郎蜘蛛はやはり見つからなかった。隅から隅まで探したのに。
その身に呪いを宿したまま、どこに行ったのだろう。
「今日はもう、寝るか」
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