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「…ったく」
誰に相談するでもなく、飛び出して行くところがなんとも弥斗らしい。
しかも…玄関を見る限り、下履きも履いて行ってないみたい。
馬鹿…
「ごめん來さん…探してくる」
振り返り気味にそう言えば、來さんは呆れたように笑っていた。
でもその笑顔は、どこか嬉しそうで…
僕は急いで家を飛び出した。
#弥斗eyes
ゴツゴツと塗装していない地面は足の裏に突き刺さってくる。
この時代で考えれば、それは普通のことで…
痛む足があたしを現実に引き止めてくれる。
あの時あたしが残って戦っていれば…
夜叉の力を迷わず使って戦っていれば…
今は違っていたのかな…??
ねえ、土方さん。
お願いだから、またあたしたちの前に現れて…
町外れの茶屋…
いつもは閑散としているその茶屋に、なにやら人集りが出来ている。
ーーーーっ!!
もしかして!!
あたしはフラつく頭を覚醒させて、その人集り目指して駆け出した。
おばちゃん、おばあちゃん、お姉さん、お姉さん、お姉さん
沢山の人を掻き分けて、その中心へと進む。
呼吸が止まった。
白黒だった世界すべてが、色付いた気がした。
長い事止まっていた時計が今まさに、動き始めたみたいに。
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