本編

6/11

274人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
泣き崩れるあたしに、周りがざわつき出す。 団子を食べていたその人は、食べかけの団子を皿に戻し、あたしに歩み寄った。 「何泣いてんだお前、しかもガリガリじゃねえか」 漆黒の髪は肩上までの短さになっていた。 だけどその綺麗な瞳と、凛々しい声に変化は無かった。 地面に膝をついて泣き崩れるあたしに、土方さんは手を差し伸べてくれる。 グイッと上に手を引かれ、あたしは自然と立ち上がった。 「…っじ、かた…さ」 「ったく、人の名前くらいしっかり呼びやがれ」 フッと鼻で笑いながらそう言う土方さん。 その口調に何も変化は感じられなくて、それがまたあたしの涙を誘った。 「じゃあ、案内してもらおうか。俺の探し求めてる奴のところへ」 #総司eyes 土方さんと2人で歩く弥斗を見つけ、僕は急いで駆けつけた。 「そう…じ…」 弥斗は、僕が到着するとほぼ同時、その意識を手放した。 僕はそれを見事受け止めると、ひょいとお姫様抱っこをする。 「総司。なんか大人っぽくなったな」 「大人も大人、もうオジサンですよ」 僕よりも歳上の土方さんに嫌味ったらしく言うと、土方さんはハハッと何故か嬉しそうに笑った。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

274人が本棚に入れています
本棚に追加