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本当は1番言いたい言葉があるんだけど、それは來さんにとっておこう。
「紺野、痩せたな。随分と」
僕の両手にすっぽり収まっている弥斗は、本当に抱いているのか疑問に思う位、軽い。
「まあ、殆ど…飲まず食わずでしたからね」
僕の言葉を聞いて、土方さんは眉尻を下げて笑った。
彼の、呆れている時の顔だ。
「どーせ責任感だの何だの感じて喉通らなかったんだろ」
「でしょうね」
弥斗の思考を一発で言い当てられる所らへん、さすがだ。
さすがは鬼の副長、とでも言っておこうか。
「ほら、見えてきましたよ。あなたのお家が」
先ほど出たばかりの我が家を見ながら、彼に告げる。
家の前には心配そうに佇む、來さんの姿が。
來さんは、僕たちの姿を見つけるやいなや、硬直し、動かなくなってしまった。
「來、悪い。待たせたな」
土方さんがポンと來さんの頭に手を乗せると、來さんの目からは大粒の涙が溢れた。
「…っだめだな…。何回も…れんしゅ、した…のに」
涙に邪魔されながらも、來さんが途切れ途切れに言葉を紡ぐ。
意味深な言葉に、そうゆうのに鈍感な土方さんは首をかしげた。
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