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「親父?母さん?」
家の中に入った瞬間彼はその異様な匂いに鼻をつまんだ。
鉄のような…どこか嗅いだことのある匂い。
その匂いが家じゅうに充満しており、吐き気を催す。
彼は手で口を押さえ、その匂いに必死に耐え彼の家族の名前を呼ぶ。
ただ事ではないと頭の中ではわかっていた。
しかしそれを認めたくなかった。
だが彼のそんな甘い考えはリビングに入った瞬間強制的に消されたのであった。
「おい…嘘だろ…?」
そこにはもう死体しかなかった。
彼の父親と母親だった死体が無残に刃物で切り裂かれ、ソファに寄り添って座っていた。
「そんな…ノノ!?ノノは!?」
部活から帰ってきているはずの妹がいるはずだ。
まさかその妹すら先ほどの死体と同じような目にあってるのでは…?
彼は嫌な予感がした。
しかしどこか淡い期待を寄せながら彼女と自分の部屋がある二階へ駆け上がる。
彼女の部屋のドアを勢い良く開けるとそこには彼女はいた。
いや彼女だった死体があるそれだけだった。
「そんな…頼むから…頼むから嘘だって言ってくれよ…。」
泣きながら彼女の頬に手を当てる。
しかし、悲しむ時間すら「奴」は与えてくれない。
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