彼女は幽霊

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 佐倉瑞希は語った。  以前、電車の脱線事故があった。その事故で、佐倉瑞希と、柚木咲哉の弟が亡くなった。  302号室は、住人の佐倉瑞希が死んで以来、空き室になっていた。事故物件ではないが未だ借り手がなく、彼女の幽霊が出没するようになった。  そのうちに、隣の301号室の柚木咲哉と親しくなった。 「どうか俺たちをそっとしておいてください」  咲夜は懇願するように言った。  幽霊が出るという噂が広がらないよう、瑞希は301号室の咲夜にとりついているのだという。  身の上話を聞いて、ガニガニ・9・ボーテはうなずいた。 「わかった。おれはべつにあんたらをどうこうしようなんて思っちゃいない。そこは安心していい」  本部のへ報告はするが、それ以上のことはしない。それが仕事だ。  咲夜は安堵の息をついた。
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