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「伊藤さんはスーパーで働いています」
「ああ! そういやスーパーで見たことあるわ」
「で、豊臣さんは牛乳の営業マンですが……」
引っ越しの挨拶回りのときにもらった牛乳がどうしても頭から離れなかった。
「牛乳の営業? インチキセールスマンみたいに見えるけど」
でも、実は……と、みこは声を落とし、「某国の工作員なんですって」
「だれから聞いたのよ」
佐野由加里は苦笑する。
「瑠々美さんが言ってました」
境井瑠々美は、202号室の双子の姉である。みこと同じ高校に通っているということもあって親しくしていた。
「だって、昼真っからこそこそとマンション周辺でなんかやってんの見たで。きっと某国の工作員やで……って」
関西弁まで真似しなくてよろしい。
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