第2章 七月十七日、成人の儀 -3-

3/7
前へ
/21ページ
次へ
  蝶を模したカチューシャが、瑠璃色の透明な光を反射する。そう言えば浅葱がこのカチューシャを着けるようになったのは、いつからだったろう。 「七城、桔平【きっぺい】さん」 ぽつりと、躊躇いがちに呟いた浅葱の声は痰が絡んだみたいに掠れていた。 「七城……?」 「イサジ君の従兄だよ」 「え……?」 ポカンと一瞬、思考が止まる。それはおかしい。だって俺の叔父と叔母の間には、 「あそこの家には、子供が……」 いないはず。そう言いかけてから、理解した。浅葱がゆっくり顔を上げて、じっと俺の目を見つめる。 「そう、か……」 「うん」 再び伏せた浅葱の目は俺の胸のあたりを凝視していたけど、きっと今はここではない、どこか遠くを見ている。  
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

43人が本棚に入れています
本棚に追加