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「本当だね」
白石はそう言いながら、表面の雪を手で払った。
「やっぱり赤くない……」
あまり触らない方がいい、と言おうとしたが、彼女はすでに十センチほど雪を掘っていた。
そこにあるのは普通の雪だけだった。
いや、彼女たちにはそう見えているかもしれないが、僕には雪ではないモノの、残骸の色が見えた。
残念ながら、それは白石の言う「赤い」色ではなかったのだが、普通の雪とは明らかに色が異なっている。
「誰かがここにあった赤い雪を、どこかに運んだのは間違いないよ」
白石が呟くと、
「私、何か怖くなってきた……」
和田がさらに一歩、後ろに下がった。
「深雪よく触れるね? そこに死体があったかもしれないんだよ?」
その顔が本当の河童のように青くなっている。
「ほんとだ!」
ようやく、自分が現場を荒らしていることに気づいたのか、白石は慌てて雪から手を離した。
「でも、そうだとしたら、ひとつおかしなことがあるんだよね」
星野が頬を膨らませている。無意識なのかもしれないが、フグのように顔がまん丸になった。
「なに? 怖いことは言わないでよ?」
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