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「誰もここに来ていないはずなのに、赤く染まった雪が朝食を食べている間に消えてしまった」 「いやだ」  和田が耳に手を当てる。 「そんなこと物理的にありえない」 「私、嘘なんか言ってないよ?」  白石が泣きそうな顔で星野を見上げていた。 「分かってる。だって伯伎も見たんでしょ?」  星野が白石を見たあと、僕を見た。 「うん。見た。それに」  僕は白石に近づく。 「白石さん、携帯で撮ってたよね?」 「ああーーーー!」  思い出したというように、白石は大声をだした。 「そうだそうだ」  そう言いながらウエアーのポケットに手を入れる。 星野が興味深そうに近づいてくるのに対し、和田は見たくないと目をつぶっている。 「本当だ」  白石が画像を表示させる。 今朝撮影した白ではない色に染まった平原が現れた。 「赤いね……」  星野も少し興奮してきたのか、声が高くなった。
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