赤い雪

1

　生まれた日に雪が降ってたから、私の名前は深雪（みゆき）っていうんだよね。

初めて会った時、そう言っていた白石深雪は、白い雪とは無縁の、小麦色の顔をこちらに向け、

「雪って白だよね？」

　と言った。

　隣りに居た僕は、思わず彼女を見る。

白石は興奮しているのか、大きな瞳を更に大きく開いていた。

頬が赤いのは、寒さのせいではなく、興奮しているからのようだ。

「一般的にはそうだと思うよ……」

　言葉の意味を図るように、僕はそう答えた。

「私もそう思ってたんだけど……、昨日は赤い雪が降ったみたい」

　そう言って、白石は窓の外を指差した。

窓の向こうは平原で、真っ新な雪が一面に積もっている。朝陽に照らされた雪が、キラキラと光っていた。

「どこ？」

　僕には赤い雪が見えない。

「ほら、あそこよ」

　白石は窓を開け、平原の一カ所を指差した。

　冷たい空気が廊下に入ってくる。

「あ……」

　僕の口から白い息が零れ、同じように白い息を吐く白石の息と混じった。

　残念ながら、僕にはそれが「赤色」には見えない。