7人が本棚に入れています
本棚に追加
「どうしたの?」
白石は大股で廊下を進んで行く。
その顔は、少し怒っているように見えた。
「伯伎くんも見たよね?」
「見たって何を?」
「赤い雪!」
「……ああ」
実際には赤ではなかったけど。
もちろんそんなことは言わない。
「それがどうかしたの?」
「消えたの!」
「え?」
「赤い雪だけ消えちゃったの!」
彼女はスキーウエアーに着替えていたが、僕はジャージのままだった。
ロビーに置いてあったサンダルに履き替え、外に連れ出される。
空はよく晴れていたが、朝方で空気はまだ冷たい。
ジャージ姿の僕は、はっきり言って寒かった。
白石はスキー用の靴を履いているので、軽快に進んでいくが、僕は雪に足をとられ、思うように進めなかった。
「早く! 早く!」
一足先に目的地に着いた白石が、こちらを振り返って手を振っている。
見ると、彼女の他に二人の女子がいた。
先ほど、「みんなを呼んでこよう」と言っていたので、友達を呼んで見にきたのだろう。
僕も、靴下をびちょびちょに濡らしながら今朝方、白石が「赤い雪が積もっている」と言っていた場所に辿り着いた。
「あれ?」
しかし、そこに赤い雪は積もっていなかった。周囲の風景と同じ雪が、ただ覆っているだけだ。
「本当だ」
凍えるような寒さが、一瞬にして消えた。
「ね? 伯伎くんも見たよね? ここに赤い雪が積もってたよね?」
同意を求めるように、白石が僕に近づいてくる。
「うん……」
最初のコメントを投稿しよう!