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「どうしたの?」  白石は大股で廊下を進んで行く。 その顔は、少し怒っているように見えた。 「伯伎くんも見たよね?」 「見たって何を?」 「赤い雪!」 「……ああ」  実際には赤ではなかったけど。  もちろんそんなことは言わない。 「それがどうかしたの?」 「消えたの!」 「え?」 「赤い雪だけ消えちゃったの!」  彼女はスキーウエアーに着替えていたが、僕はジャージのままだった。 ロビーに置いてあったサンダルに履き替え、外に連れ出される。 空はよく晴れていたが、朝方で空気はまだ冷たい。 ジャージ姿の僕は、はっきり言って寒かった。 白石はスキー用の靴を履いているので、軽快に進んでいくが、僕は雪に足をとられ、思うように進めなかった。 「早く! 早く!」  一足先に目的地に着いた白石が、こちらを振り返って手を振っている。 見ると、彼女の他に二人の女子がいた。 先ほど、「みんなを呼んでこよう」と言っていたので、友達を呼んで見にきたのだろう。 僕も、靴下をびちょびちょに濡らしながら今朝方、白石が「赤い雪が積もっている」と言っていた場所に辿り着いた。 「あれ?」 しかし、そこに赤い雪は積もっていなかった。周囲の風景と同じ雪が、ただ覆っているだけだ。 「本当だ」 凍えるような寒さが、一瞬にして消えた。 「ね? 伯伎くんも見たよね? ここに赤い雪が積もってたよね?」  同意を求めるように、白石が僕に近づいてくる。 「うん……」
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