第1章 花

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低いところに花が咲いていました。 とても小さな花でした。 だから、誰も花には気づきません。 チョウがそばにやってきました。 そのチョウは空の旅の途中でした。 しかし、花の前を通り過ぎて、目を向けることもありません。 「ああ、私がもっと大きくて、もっときれいで、みつがたっぷりある花だったら、チョウが止まって休むこともできたのに」 花は後悔しました。 何日か過ぎて、ある日のこと。ウサギがそばにやってきました。 そのウサギはおなかをすかしていました。 ウサギは花を見つけると、鼻をくんくんさせて、葉っぱを少しだけかじりました。 しかし、ウサギはそれ以上は食べずに、どこかに行ってしまいました。 「ああ、私の葉っぱがもっとおいしかったら、ウサギはおなかいっぱいになれたのに」 花は後悔しました。 また何日か過ぎて、ある日のこと。小さな女の子がやってきました。 その女の子は、お母さんにプレゼントするための花をさがしていました。女の子の手には、いくつかのきれいな花がありました。 女の子は花を見つけると、「かわいい」と言いました。 しかし、花のくきは花束にするには短すぎました。 「ああ、私の背がもっと高ければ、プレゼントの花束になることもできたのに」 花は後悔しました。
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