第2章 風

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また何日か過ぎて、ひとつの風が花の上を通りました。 世界中の空を巡る旅をしていた風は、その小さな花に興味を持ちました。 風は花にぐんと近づいて、ためしに声をかけてみました。 「やあ、君はとーっても小さくてかわいいね。まるで捨てられた金平糖(こんぺいとう)みたい」 風のからかいに、花はとても喜びました。 「誰かとお話をするなんて久しぶりだわ! ねえ、もっと何か話をして!」 風はますます花に興味を持ちました。 「そんなに暇なら、僕が今までの旅で見てきたことを話してあげてもいいよ」 「ええ、おねがい!」 風は、海を自由に動きまわる島の話をしました。 花は熱心にそれを聞いていました。 次の日も、また次の日も、風は花に話を聞かせにやってきました。 風が帰ったあと、スズメがやってきました。 「あの風は何しにやってきたの」 「私に旅の話を聞かせてくれるの。今日は空を飛ぶ女の子の話を聞かせてくれたわ。その前はバイオリンをひくネコの話だった」 スズメはケタケタと笑いました。 「デタラメのお話ばかりね。あの風はウソつきの風ね」 「うん、わかっているわ」 花はしあわせそうな声で、スズメに言いました。 「ウソの話でもいいの。私はあの風と話をするのが楽しいもの」 花はふんわりとほほえみました。 花は、とても自由なあの風のことが大好きになりました。 ところがある日、毎日かかさず花の前に現れていた風がやってきません。 「きっと、また旅をしているのね」 花は風がここに帰ってくるのを待つことにしました。 また何日かを、たった一輪で過ごしました。 その間に、雨が何度も、ざあざあと降りました。 太陽が何度も、かんかんに照りました。 そして花にとって、とても長い時間が過ぎ去っていきました。
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