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そう、本来ならばここは他国領、私達はいつ撃墜されてもおかしくはない。
相手が凶暴なら、いきなり対空ミサイルで狙撃される可能性もありえる。
そうでないとしても、これからの相手とのやり取りで私達の運命は大きく左右される筈。
……でも、今は一旦落ち着きましょう、詳しい情報をAWACSから得ないと。
「こちらガル1、AWACS、距離、機数、高度、速度を教えて下さい。」
『えぇと、距離は50km程度で、機数は……四機!高度は、離陸直後らしく極端に低高度、速度はおよそ150kmですが、5km毎時程度で加速中です!』
『こちらガル2、随分低速で飛んでるが、そいつはレシプロか?』
『わかりません……ただ、発生している熱量が極端に少ないのでジェットではないと思います。』
AWACSの答えは、皆の予想とは離れた値を示した。
本来、ジェット戦闘機はもっと速い速度を出さなければ飛び上がれない。
加速を見ても……軍用機でない可能性もあるわね。
「ガル1、了解、目視できる範囲までアンノウンに接近します。イーグル隊各機、火器安全装置解除しステルスシールドを作動、ガル2は私に追従、ガル3、4は引き続き偵察機の護衛を続けて。」
『『『了解!』』』
火器安全装置とは、所謂マスターアームと呼ばれるもので、これを解除しなければ私達は武装を使用することはできない。
つまりこれらの動作をするということは、兵士が戦場で剣を構えたと同意義。
私は降下しながらスロットルを上げ加速、ガル2も阿吽の呼吸でピッタリとくっついてきた。
『こちらAWACS、アンノウン目視範囲まであと約30秒!敵からのレーダー照射はなし、レーダーそのものも使用していない可能性が高いです。』
『なんだ?レーダー積んでないのか?』
「可能性はあるわね。」
レーダーを使っていないと、いよいよ軍用機でない可能性が高い。
この分ならきっとセスナか何かね。とっとと目視して偵察機の元に戻りましょう。
しかし、私の楽観は、思わぬ形で覆されることになる。
『間も無く目視可能範囲内です!』
「ガル1、了解。」
『ガル2、了か…………な、なんだあれは!?』
「ガル2、どうし……!?」
私達の眼前に飛んでいるのは……
飛行機でもヘリでもなく、巨大な生物だった。
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