始まり

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「チックショウ、高性能うたいながら不良品買わせやがって……クレームつけてやる……」 「隊長……」 滝野がブーブー文句を言っている所に、イーグル4、本田 燕(ホンダ ツバメ)が声をかけてきた。無口な彼女から話しかけてくるとは珍しい。 「ん?どうした?」 「……気絶してた時間を考えると、私達は目覚めた時には中国大陸にいたことになるんです……」 「もっと低い速度で飛んでたんじゃないか。」 「飛行記録をみてきましたがやっぱり合ってましたし……帰り道も明らかに長かったです。」 本田はその目で俺の方を真っ直ぐ見ながら、彼女にしてはまくしたてるようにそう言ってきた。 「確かに陸地は見えなかったんだろ?なら、多分あの変な光で機体がどうかしちまったんだ。」 「きっと日本列島がひっくり返ったんすよ!俺のコンパスがそう言ってらぁ。」 「ハハハハ、そうかもな。」 「…………」 滝野の言ったことが本当なら、全ての辻褄が合う。ありえないけどな(笑) 本田は腑に落ちない顔をしていたが、それっきり話しかけてくることはなかった。 とにかくだ、誰も陸地を見なかった以上中国上空にはいなかった訳だ。 そもそも中国の上なんて飛んだら向こうの戦闘機が飛んでくるだろう。 滝野が言ったことが起こらない限り、機体の故障しか考えられない。 …………しかし、この時起こっていた現実が、滝野の冗談よりも馬鹿馬鹿しいものだったことを知るのは、もう少しあとの話である。 ~「元」日本海沖~ 「…………」 木製の小さな小舟に乗り、蒼い海の真ん中に浮かんでいた俺は、突如聞こえた謎の爆音を聞き、そのあまりの凄さに腰を抜かしていた。 一体……一体何だったんださっきのは……あれを見てから体の震えが止まらない。 轟音を発する巨大な鳥ーー否、生物には見えなかったな…… それに、まるで音を置き去りにするような速さだった…… たまたまこの海に釣りに来て、まさかあんなものを見ちまうとはな…… とにかく、本部へ報告だ。どれくらい信じて貰えるかわからんが、「竜騎士」として、あんなものを見過ごす訳にはいかない。 俺はやっとのことで姿勢を持ち直すと、街へ帰るべく小舟を動かし始めた。
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