しょうじょト魔王

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私が魔王と呼ばれるようになってから、どのくらいの月日が過ぎ去っていったのだろうか。 姿形は違えども、心というものは人間と変わりはない。なのに、人間という種族は、自分たちと違う者に恐れをなす。 発端は些細な事だった。過去に魔の者が人間を殺てしまった。言い訳にすぎないが、魔の者には自身を守るための手段を選んだのだが、人間はあまりにも脆かった。その、脆さが故に死んでしまった。 先代の魔王は人間へ贖罪をした。しかし、人間はそれを許さなかった。最初は関係のある者だけ、だが次第に無関係な者も加入するようになった。 そして、気がついた時にはもう遅かった。 人間の中で魔の者のを退治する者が現れた。最初は狩人と言われ、その呼び名は次第に英雄そして、勇者と呼ばれた。 先代の魔王もその勇者に殺された。我々魔の者は力はあれど、戦う術を持っていなかった。人間は力がないからこそ戦う術を持った。我々魔の者は、争う事を拒んだ、しかし、人間の進行が止むことは無かった。そして我々魔の者は辺境の奥地に身を潜めながら今も暮らしている。 数は減った。恨みもある。 けど、私は先代の魔王の遺言「どんなに憎くとも、強気者が弱気者に牙をむいてはならん」、そう言い残し死んだ。 今の世界は魔王を打ち倒した勇者の子孫たちが支配しているようだった。しかし、良い意味の支配ではなかった。 我々がそれに気がついたのには、ある出会いがあった。 これを語る、数ヶ月前に我々の住む辺境に一人の人間の幼い少女が迷い込んだ。 少女を私のところに運び込んだのは一人の年老いた魔の者だった。私はその者に叫んだ。 「馬鹿のものが!!!」 我々の辺境に人間を入れることは、私が人間との関わりを避けるために禁じていた。すべて魔の者もその考えに賛同してくれていた。 しかし、老いた魔の者は、私に「この娘は人間界から逃げて来たのです」と言った。 仕方なく、少女の傷が完治するまで監視も兼ね、我々が面倒を見ることにした。 数日後、深い眠りから少女は目覚めた。 少女が、今の現状を理解しないまま私の前に立たせた。 そして、少女に問いた。 「君のような幼い少女が何故ここまで来れた?」 少女は俯くままだった。我々に怯えているのかと思っていた。その、目には涙が溢れるそうになっていた。そして、俯いていたためその涙ははボロボロと床に落ちていった。
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