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とうとう泣き出してしまった少女の対応に私も含め、周りの魔の者は動揺した。
一つため息を吐き、私は少女の前にしゃがみ、言葉を変え再び問いた。
「何があった?」
そう言うと少女は顔を上げ。
少女は泣きつつ語ってくれた。名声のために、堕落した勇者の子孫たちが争いを始め、沢山の人が死に絶えたこと。そこから逃げ、逃げる最中のことは覚えていないこと。
「怖かったんだな」
一言いって、少女は頷き私の胸に倒れこんだ。
安心し気を失ったのだろう。
我々は、今人間界では何が起こっているか、直ぐに調べた。少女の言う通り人間同士の醜い戦争だった。たかが名誉、名声、権力のために争いをする。
なんとも人間らしく、そして醜い。
しかし、今の我々魔の者には関係のないことだ。
我々は、少女をこの辺境におく事にした。
そして、少女が我々の辺境に滞在し数日が経った。私は少女に問いた。
「お前は我々が怖くないのか?」
少女は言った。
「怖くないよ!人間より優しいし、カッコいいよ!」
単純な返答だった。少女にとって我々より人間の方が恐怖なのだ。
そして、我々には少女の笑顔が必然となった。
我々の光になった。
だが、我々の平穏に踏み入ってならない者達が踏み入ってきた。
勇者の子孫達だ。名声、名誉、権力のために、魔の者の存在を世界に広めたのだ。自分たちの過ちを全て我々に向けさせたのだ。
我々が差し向けたと世界にそう思わせた。
自分達の罪から逃れるために。
我々とて莫迦ではない。先代の魔王の言葉を破ることになったが、皆理解してくれた。
私は少女を守りながら戦った。だが、私の力が及ばず何人も同胞が倒れた。同胞の中に子供もいた。人間にとっては我々はただの化け物でしかなかった。
そして、我らの今後を決める瞬間がきた。
一本の矢が少女の命の源を貫いた。
理性を失った私は何人も人間を殺した。皆も同じだった。
我々の手も血に染まり、勝利した。
だが、失う者が多すぎた。
少女は私の腕の中で一言「死にたくない」と言い意識を失った。
我々は少女を介抱した、何日経っても少女は目覚めることはなかった。
辺境の皆も悲しんだ。
しかし、なす術がなかった。
いや目を背けていただけだった。
少女を人間から魔の者に転生させれば目を覚ます。
けど、出来なかった。
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