あの世とこの世の距離なんて

3/3
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
イヤホンから届く音が意味を成さなくなった頃、すっ、と入り込んできた。 納得できるなぁ、と思ってしまった自分にびっくりして、慌てて周りを見る。 iPhoneから延びるピンクのコード。 使い古したリュックに、チェックのスカートから覗く膝。 生きている証に安堵する。 「死」という重いワードがこんなにもしっくりくるなんて、思いもよらなかった。 失言を発してしまい、気まずい時。 大きな失敗をしてしまった時。 実際に死にたい訳じゃなくて、その場から消えてなくなってしまいたい。 そんな気持ちに寄り添ってくれる。 消えた後どんな風に戻るか、なんて詳しい設定はどうでもよくて。 この言葉があれば、一息ついてまた動き出せる。 それだけで、十分だ。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!