いいこと

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リビングで会長とグラスの準備をしていると、渉さんが降りてきた。 「渉さん…」 私が渉さんを振り向くと、すぐそばで会長が言った。 「渉のヤツ…寂しくなったんだろ」 そして会長はクスクスと笑った。 すると渉さんがソファに勢いよく腰を降ろして会長を睨む。 「年寄りは早く寝ろよ」 「いいじゃないか。ねえ、桐谷君」 「はい。でも飲み過ぎはダメですよ。お体に障(サワ)りますから」 私たちのやり取りを見て、渉さんがテーブルの上のシャンパンを手にした。 「二人でイチャつくんじゃねえよ。…しかも、俺が来ねえと思って高いの開けようとしやがって」 「高いからじゃない。知ってるだろ?酒の苦手な桐谷くんでも、それなら飲みやすいだろ」 「言い訳はどうでもいい。一杯だけ付き合ってやるからとっとと寝ろ。その後は望愛を返してもらう」 すると会長は渉さんからボトルを奪って、一番先に私のグラスに注いだ。 「桐谷くん、おいしいシャンパンだからゆっくり飲もう」 「ゆっくりじゃねえよ。一杯。ささっと飲んじまえ」 「渉のことは気にしなくていい」 「気にしろ、あほ」 「親にアホとは何だ?」 「完全にアホだろ」 「ちょっと!二人とも!せっかくの美味しいお酒ですよ?ケンカしないで…ほら」 私が二人のグラスに金色の液体を注ぐ。 「見てください…きれいですね」 横からグラスを覗き込むと、細かな気泡が本当にきれいだった。 「さ、乾杯しましょ?」
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