いいこと

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私と同じ定食を前にした野崎さんは少しはにかむ。 今日は生姜焼き定食だった。 「これ…おいしいね」 「うん、美味しいね」 彼女の横顔を見て思わず笑みが零(コボ)れる。 わかるなあ… 言いたいけれど、なかなか自分から切り出せない瞬間… 私はみそ汁のお椀を持ち上げながら言った。 「…室長…なんだかすごく…うれしそうだよ」 「…え?」 野崎さんの頬が急速に染まる。 決してそれを面白がってるわけじゃないけれど、私は付け足した。 「社長が言うには…浮かれちゃってるみたい」 彼女は何も言わずに真っ赤な顔で私を見つめた。 そして口を開く。 「…室長にとっても…『いいこと』だったのかな…」 「絶対にそうだよ」 私は彼女に力強く答えた。
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