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人を喰らう魔獣・人間を売り物とする醜悪な人間共・殺人を好む盗賊共etc…
この危険で醜い世界で依頼を受け、仕事を行うギルドメンバーに舞い込む依頼はやはり、顔を背けたくなるようなものが殆どだ。
その為、依頼を受けたギルドメンバーは、覚悟を決めて仕事に臨む。
だが、今回の彼女は違った。
今回、彼女が受けた依頼は、【海の中に沈んでいる巨大な鉱石を引っ張り上げるという、紅虎にとっては楽な内容。
彼女は、華奢な身体つきをしているものの、実は、ギルド1の力持ちなのである。その為、今回の依頼は彼女に任せられたのだが…
現在の彼女の顔からはあの凛々しい表情は消え、代わりに何だが気の抜けたような、やる気の無い顔があった。
彼女がいるのは、【シルフローレン】という、白を基調とした建物が並び、近くには、青くて綺麗な海がみえるという実に珍しく争い事の無い穏やかな街で、彼女はその街の中心にあるパン屋の中に何故かいた。
木で組み立てられた室内に並べられた棚には、焼きたてのパンが並べられ、そこからは香ばしくも甘い香りが漂ってくる。
その奥にある、これまた木で出来たカウンターの椅子に紅虎が腰掛けており、その向かいに、今回の依頼主である、パン屋の夫婦が座っていた。
そして室内には、この街の住人達が押しかけている。
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