4人が本棚に入れています
本棚に追加
…とは言え。
紅虎とて、この夫婦の気持ちが分からない訳ではない。
この危険な世界の中で、むしろこんなにも穏やかな街がある方が珍しい。
だが、いつ、他と同じような目に合うか分からない上に、周りであれだけ【魔獣注意】などの警告を聞いていれば、親としては不安にもなるだろう。
(それに…)
紅虎はふと、過去を振り返る。
蘇る記憶には、家族の温もりなんてものは、一切無かった。
(うちの親とは大違いだな…)
そう心の中で呟き、【ふう…】とため息をこぼす。
親の温もりを知らない彼女にとっては、手を伸ばしても届かなかった羨ましい光景。
だからこそ、逆に助けてやりたいと思った。
「良いですよ。手伝いましょう。」
胸の前で両手を組み、紅虎は夫婦に向かってそう言った。
その言葉に、夫婦は目を見開いて紅虎を見つめる。
「…え?」
まさかこんなにも簡単に承諾してくれるとは思っていなかったのだろう。その顔には、【え、信じていいの?嘘でしょ?】と書かれている。
「この世界じゃ、何が起きても不思議じゃないですしね。調べてみる価値はありそうですよ。
それに、そんなに必死に頼まれちゃ、断るわけには行きませんしね
?私が責任持って探しましょう。」
そう言うと、紅虎は大胆不敵に笑った。
最初のコメントを投稿しよう!