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「あ…ありがとうございますっ!お願いします!」
依頼成立が余程嬉しかったのか、夫婦は両目から滝のように涙を流しながら、紅虎の手を握り【ブンブン】と力強く上下に振った。
更に、今まで外で事の成り行きを見ていた街人達も、依頼が成立した瞬間、【パッ】と顔を輝せて一斉にパン屋の中に押し掛ける。
「良かったな!無事だといいな!」
「姉ちゃん、よろしく頼むよ!」
そう歓喜の声をあげながら一斉に押し寄せてくる街人達の後ろには、無残に飛び散ったパンと、トレーの哀れな姿。
あまりにも興奮している為、パンの棚にぶつかった事にも気づかないらしい。昨日失踪したばかりなのに、えらい騒ぎようだ。
「どうでもいいけど、それ片付けないと、夫婦に殺されるぞ。」
紅虎は無残に横たえるパンの残骸を見、ため息をついた。
こうして、無事に依頼は成立したのだが、この後、只の家出少女探しが、とんでもない事件に発展している事はまだ誰も知らない。
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