天秤は真実を腕に、炎を燃やす

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……だが。 「お、おかしいよそんなの! 確かに私は言っちゃいけない事を言ったかもしれない。でも、そんなの本心じゃないし……願いでもない! そんなこと現実になっても、私は幸せになんかならない!!」 悪気はなかった。 悪気はなかった。 悪気は……子どものような言い訳を鎧に、遠藤はひたすら男に言葉をぶつけた。何故彼が先程の出来事を知っているのかわからなかったが、今はもうそのような事は気にならない。 「確かにな、通常はそんな些細な事で死ぬことはないだろう。だが、今回のケースは『通常』じゃない。お前さんに運が強く働きすぎ、彼女に運がなくなりすぎてた。そういうことだ」 「……そういう、ことって……どういうこと……?」 男は遠藤の空虚な反撃に耳を貸さず、ただ話を進めていく。その口調は決して遠藤を責めるものではなく、呆れたものでもない。ただ、どこまでも温かみを感じさせない口調だった。 「お前さん、『幸福の天秤』がどういう品だったか覚えてるか?」 「た……他人の幸運を、ほんの少しだけ分けてもらって、自分も幸せになる道具……」 「概ね正解だな。じゃあ次だ、『ほんの少し』とは一体どれくらいだと思う?」 「え、と……」 そういえば。 遠藤は気にも留めなかったが、そもそも元が天秤という計測の道具であるにも関わらず、分量が非常に曖昧だ。
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