2人が本棚に入れています
本棚に追加
マキは疲れているのだろうか。それとも、知らないうちに何かまずい事を言ってしまったのだろうか。
一度気付いてしまうと、遠藤はマキの不可解な表情の意味が非常に気になった。
「えと……マキ、どうかした?」
気付けば空になっていたグラスを机に起き、遠藤は当たり障りのないように尋ねた。グラスの中の氷が、互いがぶつかるカランという音を立てた。
「……今日、初めての質問だね」
マキは、遠藤の質問に答えなかった。ぽつりと、遠藤に向けたのかも不明瞭な言葉を漏らすと、グラスに残った酒を一気に飲み干す。
「紡はさ、前の赤ぶちメガネの方が似合ってたよ」
マキは空のグラスを遠藤の物と並べて置きながら、言葉を続けた。氷のぶつかる音よりも、机に置く時のゴトっという音がやけに鈍く響いた。
後の言葉は遠藤と目を合わせて言った、明らかに遠藤に対して放たれたものだ。その目はやはり笑顔らしき形をとっていたが、光を宿していない。
これが、あの明るかったマキなのだろうか。
遠藤はわけがわからず、ちゃんとサイズを合わせて買い直した白ぶちの眼鏡に、意味もなく触れた。
最初のコメントを投稿しよう!