天秤は過去を繋ぐ

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マキは疲れているのだろうか。それとも、知らないうちに何かまずい事を言ってしまったのだろうか。 一度気付いてしまうと、遠藤はマキの不可解な表情の意味が非常に気になった。 「えと……マキ、どうかした?」 気付けば空になっていたグラスを机に起き、遠藤は当たり障りのないように尋ねた。グラスの中の氷が、互いがぶつかるカランという音を立てた。 「……今日、初めての質問だね」 マキは、遠藤の質問に答えなかった。ぽつりと、遠藤に向けたのかも不明瞭な言葉を漏らすと、グラスに残った酒を一気に飲み干す。 「紡はさ、前の赤ぶちメガネの方が似合ってたよ」 マキは空のグラスを遠藤の物と並べて置きながら、言葉を続けた。氷のぶつかる音よりも、机に置く時のゴトっという音がやけに鈍く響いた。 後の言葉は遠藤と目を合わせて言った、明らかに遠藤に対して放たれたものだ。その目はやはり笑顔らしき形をとっていたが、光を宿していない。 これが、あの明るかったマキなのだろうか。 遠藤はわけがわからず、ちゃんとサイズを合わせて買い直した白ぶちの眼鏡に、意味もなく触れた。
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