プロローグ

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8年前東京にいる叔父の家に行った時だった。 当日彼は大学、社会人を経て下位指名ながらプロ野球選手になったという苦労人だったが、外野のレギュラーとなって活躍中だった。 そんな叔父は物心ついた頃から野球を見て育った私にはヒーローだった。 そんなピッチャーや四番等の花形選手ではなく、打線では下位を打ち、脚が速く守備が上手いという知名度もさほど高くない玄人受けのいい選手ではあったが、それでも実の叔父がプロ野球選手と言うだけで彼はヒーローであった。 今となって考えてみれば、勿論プロ野球選手でレギュラーと言うだけでも雲の上の存在だと言う事は重々承知しているが……。 そんな彼の家に夏休みを利用して行った時の事だ。 たまたまその日試合が無く叔父は一日私や姉達と遊んでくれた。 そして夕方彼は一人の青年を連れて来た。 彼の名前は櫛名田繚(クシナダ リョウ)。 今ではセ・リーグ有名球団の正捕手を務め、日本代表でも正捕手となった超一流キャッチャーである。 この時はまだ大卒2年目の新人であった。 叔父によると彼は大学の後輩で今日はたまたま東京に居ると言う事で飲む事となったらしい。 そんな櫛名田さんは叔父の膝の上でおつまみを頬張る私に言った。 「君は扇の要って知ってるかい?」 そうあの時、私いや俺はキャッチャーになろうと思ったんだ。
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