柴田家のカイコ

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ここに、世にも奇妙な階段がある。 その名前を「考える階段・カイコ」という。 階段の階に子どもの子で階子(カイコ)である。 階子は僕の家、一階と二階を繋ぐ階段だ。 この階段、普通の階段とは明らかに違っている。 怪奇現象だとかそういう言葉で表せられる限度を、軽く越えている。 まさしく、生きているとしか思えない。 こいつのことを階段と読んでいいのかもあやしいところだ。 なぜなら、時にはエスカレーターになることもあるし、ごく稀にだが、機嫌が悪いと梯子になることもあるからだ。 例えば、夜中に小腹がすいた時のこと。 僕の部屋は二階にあり、キッチンは一階なので、どうしても階段を通らなければならない。 するとだ。 まるで「こんな時間にどこにいくの?」と聞くかのように階段がギシギシ音をたてるのだ。 階段の音くらいで、と思うかもしれない。 けれど、長年こいつと付き合ってきたからか、こいつにそういう能力があるからかはわからないが、何となくこいつの言いたいことが、僕ら家族にはわかるのだ。
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