柴田家のカイコ

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そのまま降りようと思えば降りられるが、答えないと音は段々大きくなるだろうし、何より階子が不機嫌になってしまう。 面倒見もよく、よく気を遣ってくれる。 ただ、少しばかり小うるさい。 僕が感じるに、階子はそういう性格をしている。 事実、うちの母親よりもあれこれ世話を焼きたがる。 夜食なんてしようものなら、一週間は通る度にギシギシ言われるだろう。 「ちょっとトイレ」 仕方なく、そう答えた。 すると音も止み、すんなりと一階まで降りることが出来た。 こいつは人を疑うことを覚えた方がいいななどと、そのときの僕はのんびり考えていた。 トイレにいくと言った手前、まさか食材を持って上がるわけにはいかない。 キッチンで食べ、一応トイレの水だけ流して二階へ向かった。 そして階段を一段、二段と上がったときである。 「あれ?」と言うようにギシリとなる。 まずいと思うが先か、階段を駆け上がるも、一足遅かった。 階段が下に流れ始めた。 言わば逆エスカレーター状態である。 しかも、僕の上がる速さに合わせてエスカレーターの速さも変わるので、本当になかなか上がれない。 これは明らかに怒っている。 階子はいつも人に乗られているからか、人の体重の変化に敏感のようだ。 トイレにいくと言ったのに体重が増えていることを不思議に思い、夜食を食べたことに思い当たったのだろう。
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