柴田家のカイコ

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だが、こういうときの対処法もまた、長年の経験でわかっている。 上るのを諦めて、仕方なく一階まで降りた。 すると、僕が怒ったのではないのかと、不安そうに小さくギシリと音がなった。 こういうところが、なんともいじらしい、可愛いやつなのだ。 エスカレーターになったり、梯子になったりと言うと、厄介なものが家にあって、さぞ迷惑してるんだろうなどと思うかもしれない。 けれど、そんなことはない。 僕含め、僕ら家族は皆階子のことが大好きなのである。 そのことを最初に断っておきたい。 一階に降りた僕は雑巾を手にすると、再び階段へと戻った。 「嘘ついて悪かった」 一言そういうと、僕は階段の掃除を始めた。 どんなに機嫌が悪くても、掃除をすれば階子は一発で機嫌が良くなる。 掃除を終え、雑巾をもとの場所に返すと、再度階段へ向かう。 するとどうだろう。 今度は上りのエスカレーターとなった。 これはすこぶる機嫌が良い証拠だ。 上がりきったところで、ギシリと音が鳴る。 僕もそれに答えて、おやすみと言い、部屋に戻った。
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