柴田家のカイコ

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また、こんな話もある。 これは僕の経験ではなく、妹から聞いた話なのだが、ある日、妹の友達が遊びに来たときのこと。 階子は普段、どちらかと言うと騒がしい方で、言ってしまえば、通る度に何かしらの反応がある。 最近は、通る度に段数が違う。 段数と一緒に一段の高さも変わってしまうので、こっちとしては少し迷惑なのだが、階子は僕らを楽しませたくてやっているのだろうから、我慢している。 そんな階子も、僕ら家族以外の人間がいるときは大人しく、普通の階段になる。 だがその日、妹の友達が来た日は少し違ったそうだ。 その日来た友達は、妹と幼稚園からの付き合いで、中学生になった当時でも、とても仲が良かった。 妹の学生鞄には一つだけキーホルダーが付いているのだが、とにかくセンスが悪い。 ダサいから外したらどうだと言っても、わかってると言いながら外そうとしない。 わかってるなら何故外さないのかと疑問に思っていたのだが、以前その友達の学生鞄を見たときに合点がいった。 その友達も妹と同じように、鞄に一つだけ、妹と同じセンスの悪いキーホルダーを付けていた。 妹とこの友達でお揃いにしたのだろう。 とにかくまあ、そのくらい仲が良い。 うちに来るのももちろん初めてではない。 と言っても階子のことは知らない。 階子もその子が来るときは、いつも普通の階段となっていた。 その日以外は。
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