第一章

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 大通りに出る。赤信号で自転車を止める。そのとき浩二は雪が降ってきたことに気が付いた。積もる雪だ。雪国育ちだから手に乗せた瞬間それがわかって、急に不安になる。  傾斜の緩い坂道を上がっていくと、右側に石垣が出てくる。浩二は石垣につけるように自転車を止めると、公園内に入っていった。  遊歩道が公園の敷地を囲むようにつくられている。子どもたちの遊ぶ、ブランコや滑り台などの遊具は中央あたりに置かれていた。浩二は遊歩道の内側を三日月型に繋いでいる茂みの中に入っていった。  雪が激しくなってきた。折り畳み傘はリュックの中に入れている。しかしこれだけでは寒さはしのげなかった。  木の下に段ボールがあって、浩二はしゃがむと中を覗き込む。そこには子猫がいた。浩二を見ると嬉しそうに鳴き出した。頭を撫でる。体は冷たかった。 「これからどうしようか」  三日前、道路の端で捨てられている子猫を、この場所に連れてきたのは浩二だった。自分の家では飼えないし、かといって見捨てるのも心苦しかった。危害を与えられると思って、できるだけ人目から遠ざけようとしたが、こんなことなら子供たちにでも引き取ってもらうんだった。 「とりあえず、これ食っとけ」  浩二はリュックから鮭の缶詰を出すと、蓋を開けて子猫の前に置いた。  だが子猫は鳴くだけで食べようとしない。 「あぁ、そういうことか」  段ボールの隅にスナック菓子の空袋があった。誰かがやったのだろう。  缶を引き上げると、もう一度頭を撫でた。これから夜にかけてさらに冷え込んでくる。暖はとれなくても、せめてまともに雨宿りくらいさせてやりたい。  そのとき浩二の後ろでザザと葉っぱを踏む音がした。目を細め振り返る。誰かが近づいてきているのはわかるが、暗くて姿がシルエットになっていて、誰だかわからなかった。その人が歩くたび、ザザザと葉っぱのなぎ倒される音が大きくなっていった。 「え、人? どうしてこんなことにいるの?」    その人は浩二を見ると、不快そうに眉を曲げる。 「え、いや、あの」  浩二は驚いた。 「なに、君この猫飼うの?」 「違います。ただ見に来ただけです」 「ふーん、そっか」  気の無い返事がきて、その人は乱暴に段ボールを持ち上げた。その人はいつもバイト先へ行く前、スーパーで見かける金髪の女の人だった。
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