第二章

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 次の日、浩二は普段と変わりなくバイト前にスーパーに寄り、オレンジジュースを駐輪場で飲んでいた。  横目で喫煙ブースを見る。やはり昨夜の女の人がタバコを吹かしていた。  女の人は浩二に気が付くことなく、物憂げな表情のまま空を見ている。もしかして俺のことを知らないのだろうか、と浩二は思った。よくよく考えてみれば、こちらが一方的に知っているだけで、一度も目が合ったこともなければ、昨日まで話さなかったような人など眼中にないのが普通だろう。  浩二は空になったオレンジジュースをカゴの中に入れる。スタンドを上げると、自転車にまたがった。  今日は昨日よりも客が少なく、残業なしでバイトを終わることができた。自転車で公園へ向かう。  茂みに行くと、昨日女の人が言っていた通り、子猫はいた。 「おぉ、いい子だったか?」  頭を撫でる。猫は気持ちよさそうに目を細めた。今日は段ボールの中にはなにもない。 「鮭食べるか?」  すると猫は「ニャー」と鳴いた。缶詰をあけ、目の前に置く。がつがつと食べ始めた。    それからバイトのある日は必ず通い、缶詰をあげた。家から公園までは結構距離があって、さすがに毎日はいけなかった。  そんなある日、吹雪になり雪が降った。浩二は たまたまバイトがあり、終わると公園へ急ぎ、猫の入った段ボールを象の下に置きに行った。猫は凍えていて、体を震わせていた。浩二は持っていたタオルで猫の体を包むと胸に抱く。悲しいが今はこれしかできなかった。  浩二は、猫の震えが無くなると、そっと段ボールに戻し、その場を去った。  次の日、スーパーでオレンジジュースを飲んでいると、横からあの女の人が近づいてきた。
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