第二章

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「悪かったね、猫。アンタが象の下に持って行ってくれたんだろ?」 「あ…はい」  浩二は怒られるような気がしてうまく返事できなかった。 「アンタ、毎日エサあげてるのか?」 「毎日じゃないです。バイトのある日だけ……」 「そっか、悪いな」  女の人はうつむくと足元にある石ころを蹴った。 「私、基本朝しかエサあげられないからさ、夜はどうなってるのかわからないんだ」 「朝は、あげてるんですか?」  浩太が尋ねると「まぁ一応」と女の人はすこしだけ恥ずかしそうに答えた。  浩二は意外に感じた。雪の日のことを考えれば自然だが、どうもこういった容姿の人はいい加減な性格のイメージがある。 「それに雪の日、ごめんな、私態度悪かっただろ? めんどくさいこと嫌いだからさ、あまり人と喋りたがらないんだ」 「いえ、別に何とも思ってませんよ」 「そう、それならよかった」    女の人は柔らかな笑顔を浮かべた。  しばらく無言が続いた。女の人がため息をつく。 「それじゃあ」  そのまま去っていこうとする。浩二はどうしてか何かしゃべらないといけないと思った。 「あの」  裏返った声で話しかける。 「あの、えっと、あの―――」 「加藤でいいよ」 「加藤さんは、あの猫飼わないんですか?」    するといつもの物憂げな表情で 「彼氏がね、猫は嫌いなんだってさ」  と、言った。
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