第7章 夕涼みの誘い

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「うちにいる子に、お休みの挨拶をしてたのよ~」 しつこく絡んでくる男に、答えを与える。 「ああ、あの男の子?どうせなら連れてきなさいよぉ!」 「別の子よ~それより、この悪趣味な照明、何とかならないの?」 隣に座る男にぼやく。 鈴と同じぐらいの体つき。 顔はかなりいかつく、男性フェロモンを垂れ流している。 剃りたてのスキンヘッドが、照明を反射する。 「え?Hな気分にならない?あとは女子力アップとか?」 「まぁ、リラックス効果はあるけど……よく眠れるとかね」 えぇ~、と身をよじる大男。 確かに、ピンクには、エストロゲン(女性ホルモン)を活性化させる効果もあるという。 ただ、こんな見かけでも、そこらの女性より女子力は高いから必要ないだろう。 そう思い、だんまりを決めこむ鈴。 「それよりも、本当に大丈夫なの?」 「ええ、名刺も貰ったから間違いはないと思うけど……こんなの、何に使うのよ?」 「うちのもう1匹の子猫ちゃんのために、必要なのよ。なかなかガードが厳しくてね~」 昔の顔なじみではあるのだが、あまり会いたくなかったのは事実だ。 (いや、天敵かしら……?) こちらが勝手にドロップアウトしたことを、今でも根にもっているに違いない。 非常に執念深い、いや、面倒な男。 でも、今回は彼の手を借りる必要がある。 「まぁ、詳しいことは聞かないわ。でもこれは貸しだからね!」 「了解~お返しを楽しみにしてて」 「あら、今すぐ返してくれて構わないけど。勿論、あ・な・たで……」 「お・こ・と・わ・り!」 腰に回される手を、叩き落としながら、何食わぬ顔でマティーニを口にする。 相手も本気ではない。 互いに、好みは年上の男性である。 だから、単なるスキンシップの1種だ。 「それにしても、繁盛してるわねぇ」 「あ~ら、あなたのしょぼい花屋が潰れたら、雇ってあげても良くってよ!!」 高笑いをする男に、笑顔でチョークスリーパーをかける。 あの花屋は、鈴の大切な宝物だ。 必死に腕を叩く男が、ぐったりしてから満足げに開放する。 「次、あたしの店をバカにしたらもっと酷い目にあわすわよ?」 「やれるもんなら、やってみな!」 ゼイゼイ言いながらも、中指をつき出す男。 負けず嫌いなケンカ仲間の一言に、鈴は微笑みながら拳を握った。
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