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色彩の乏しいオフィスに置かれると、より目立つ。
黄色とオレンジが、目に鮮やかだ。
共有スペースに飾られた花バスケット。
「おっ、珍しい」
「ええ!素敵でしょ?」
「花があるって良いよな~さすが、赤木さん!」
「ほめられても、何も出ませんよぉ!」
いつもより高めの声で、応じる真奈。
その楽しげな様子に、話に加わる人も増える。
数人が立ち止まって話すことで、課内の注目も自然と集まってくる。
机で書類を見ている勇樹も、時折顔をあげるのを確認して、真奈は口を開いた。
「偶然、良い花屋を見つけたんですぅ……そうだ、渡辺課長ー?」
「………何だ?」
注目の中、声をかけられたため、勇樹も返事を返さざるおえない。
極力、感情を抑えた声で答える。
「実は、そこで課長の奥さんが働かれてたんですよぉ!これも、作ってもらったんですよ?」
「課長の奥さん凄いっすね!」
周りが口々に騒ぐ中、真奈の目は勇樹を真っ直ぐ見つめる。
全体と見せかけて、勇樹に話しかけている。
「でしょー?皆さんも行ってみて下さいね。あっ!」
思い出したかのように、満面の笑みで付け加える。
「……特に女性にはおススメですよぉ!凄く格好良い店長がいるんです!」
その言葉に、女性陣も色めき立つ。
真奈は、誇張して鈴の容姿を褒めあげる。
勿論、言動には一切、触れない。
「でも、そんな男性と2人きりなんて、渡辺課長も心配になるんじゃないんですか?」
少し笑いを含んだ声で、勇樹に問いかける真奈の同僚。
その言葉を待っていた、真奈は心の中でほくそ笑む。
「いや、何もないって」
困ったような顔で答える勇樹。
「でも、人妻の”不倫”、増えてるって言いますよねぇ?ドラマとかも多いし。よくあるのは、夫が……」
すかさず、話に加わる真奈。
目線はずっと、勇樹の顔。
「ははっ!テレビの見すぎだ。花も良いけど、皆も、そろそろ仕事に戻れよ?……赤木、昨日の報告書の件で話があるから、あとで会議室に」
手で追い払うような仕草を見せる。
苦笑しているように見せかけながら、かなり苛ついている様子の勇樹。
こめかみがひくついているのが、その証拠だ。
「わかりましたぁ」
(久しぶりの2人の時間。上手く使わなくっちゃねぇ……?)
軽い足取りで、勇樹を追った。
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