368人が本棚に入れています
本棚に追加
「明日、店長達と夏祭りに行ってきても良いかな?」
思いだしたように、口にする由美子。
複雑な勇樹の心情を、知らずに。
「………店長って男だろ?しかもイケメンの。夜遊び相手には良いかもな」
勇樹の口調も、自然とトゲトゲしくなる。
「そんな風に言わなくても良いじゃない!2人っきりじゃないし、それに店長は、勇樹が思っているような人じゃないからね!」
力を込めて、主張する由美子。
「確かに、世間的に格好良いと思うけど、店長は男性のほうが好きだって前言ってたし……勇樹の思っているようなことはないよ」
「ふーん、女性と比べたら男性のほうが好きってことかもよ?世の中には、男性・女性両方ともいける人もいるからね」
いわゆる両刀使い、と勇樹が言うと、由美子は顔を赤らめる。
「え、え、でも、店長はお姉さんみたいな存在で……た、多分、大丈夫だと思うよ!」
途端に弱くなった口調に、思わず口元が緩む勇樹。
心の動きがわかりやすい由美子。
(相変わらず、素直すぎるぐらいの反応だな……気のせいだったかな?)
焦燥感もいつの間にか、鳴りを潜めていた。
「ごめん、意地悪だったね。いいよ、楽しんでおいで」
腕を伸ばして、由美子の頭を撫でてやる。
「晩ご飯は気にしなくて良いよ。外食するから」
「ありがとう!」
「……感謝は態度で示して欲しいな?」
笑顔の由美子に、勇樹も楽しげに目を細める。
人差指で、何度か自分の唇に触れる勇樹。
案の定、うろうろと目線をさまよわせる由美子。
「早くしないと……」
「うぅ~」
ちょっとした意地悪で、目は開けている。
片手で、髪を押さえながら赤い顔を近づけてくる。
チュッ、と掠めるようなキスで済まし、離れていく由美子の手首をしっかり捕らえる。
びくり、と身体を震わす由美子。
「今夜は、疲れた俺を癒してね?」
捕らえた指先に口づけを落とす。
「……先にお風呂入って、待ってて。後から行くから」
硬くした身体から、力が抜けるのがわかった。
(今すぐでも、構わないけど……)
久しぶりの夜を過ごす。
少し、気持ちの整理が必要だろう。
そのかわり、今日は手加減するつもりもない。
花屋の仕事も良いが、勇樹としては早く2人の子供が欲しい。
(もう十分待ったから良いよね、由美子?)
さぁ、家族をつくろう。
最初のコメントを投稿しよう!