第7章 夕涼みの誘い

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交わる視線。 重たい空気の中、睨みあう2人。 「……ちっ!壁、直しとけよな!」 拗ねた声で、扉に背を向ける純也。 「了解~ついでに壁紙を花柄にしてあげましょうか?」 クスリ、と笑いながら、純也の負け惜しみに余裕たっぷり返す。 先ほどまでの雰囲気はかけらもない。 「うるせぇ、余計なことすんなよ!」 しっかり釘をさしておかないと、本当にやりかねない。 「えー?無料でリフォームしてあげるのにぃ?」 同じ人物だとは思えない変わり方に、純也はため息をつく。 (今日は、諦めるか……) 未だ、あの口調になった鈴に勝てた試しがない。 「で、俺は一日、仕事もせずに何をすれば良いわけ?」 口元を微かに曲げながら、純也は答える。 従ってはいるものの、悔しくない筈がない。 ついつい口調が皮肉っぽくなる。 「由美子ちゃんと店番しててくれる?1人だと不安だろうから……夕方からは、3人で夏祭りに行くからよろしく~」 「問答無用で俺も参加かよ……」 「もちろんよぉ!純也君も、たまには息抜をしないと駄目だからね?今日1日は仕事のことは忘れちゃいなさいな」 ワックスで無造作に、前髪を全て後ろに流す。 その様子を興味深げに眺める純也。 くつろぐ純也を促して、階下に降りる。 「そんな格好で、どこに行くんだよ?」 なぜか、純也に負けないぐらいのため息をつく鈴。 「まぁ、子供でいうと歯医者に行くようなものよ……必要に迫られているけど、泣き叫びたいみたいな……あ、おはよー!」 「おはようございます!あ、純也君!?」 驚く由美子に、軽く手を上げる純也。 鈴愛用のエプロン着用を目で促され、全力で拒否している最中だ。 結局、この勝負は純也に軍配が上がった。 「2人とも留守番よろしく~店は昼まででいいからね……って、由美子ちゃん!」 残念そうにエプロンをしまいながら、眉をつり上げる。 いつもよりは身の回りに気をつかっている由美子だが…… 「もうっ、せっかくだから浴衣を着ましょうよ!純也君にみつくろってもらって……」 「そんな、悪いですよ!」 「遠慮はよくないわよぉ……」 純也の耳元で、何事か囁いて鈴は店の外にでる。 気持ちよく、乾いた風。 「今日も暑くなりそうね……」 額に手をかざしながら、鈴はどこまでも青い空を見上げた。
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